【イベントレポート】「働き方と組織の未来~介護問題からダイバーシティを実現する働き方と組織の未来を考える~」を開催しました。

ゲスト:高野 竜二氏(株式会社ガイアック デジタルコミュニケーション事業部 ICTソリューション事業グループリーダー)、木村 智浩氏(株式会社ガイアックス 管理本部 人事労務・広報IRマネージャー)

会場協力:GRID

2017年9月20日に「働き方と組織の未来~介護問題からダイバーシティを実現する働き方と組織の未来を考える~」を永田町GRIDで開催しました(※本企画は東京大学体験活動プログラムを通じてWork Design Labにきているインターン学生が企画・実施しました)


<開催趣旨>
新しい働き方を実践・推進する「個人」と「組織」のゲストを各1名お呼びして開催する本企画。今回は、介護をきっかけに仕事を辞める「介護離職」をテーマに、実際に介護離職を経験後、リモートワークを通じて、介護と仕事を両立し、その後、復職された方をゲストとしてお呼びします。また育児・介護などに左右されない働き方を実現する組織の在り方や、制度だけではない仕組みについても考えていく予定です。

<当日のタイムテーブル>
18:30-19:00 開場
19:00-19:15 オープニング
19:15-20:45 イノベーターズトークセッション・ダイアローグ
・テーマ:「介護問題からダイバーシティを実現する働き方と組織の未来を考える」
・ゲストパネラー:高野 竜二氏(ガイアックス)、木村 智浩氏(ガイアックス)
・ファシリテーター:田邊慎史(Work Design Labインターン)
20:45-21:45 ネットワーキング(懇親会)

ゲストスピーカー

①高野 竜二(たかの りゅうじ)氏
株式会社ガイアックス デジタルコミュニケーション事業部 ICTソリューション事業グループリーダー

[プロフィール]
システム開発エンジニア。ガイアックスでは、企業へのデジタルマーケティング支援のためのwebメディアの開発やクラウドサービスの提供、シェアリングエコノミーに特化したパッケージシステム開発等を担当。ガイアックス入社6年目に、家族の介護が必要となり離職を決断。その後、会社からの提案で在宅テレワークかつ業務委託というカタチで仕事を受けはじめ、現在は職場復帰を果たし通常勤務となった。介護離職を通じて見えてきた「場所にとらわれない働き方」を実践するための「課題と兆し」、またチームやクライアントとの「信頼関係の作り方」について、自身の体験談をメディア等を通じて発信中。

②木村 智浩(きむら ともひろ)氏
株式会社ガイアックス 管理本部 人事労務・広報IRマネージャー

[プロフィール]
早稲田大学卒業後、2004年にガイアックスに入社。営業、新卒採用、広報IR、経営企画、SNS事業立ち上げ(国内トップシェア獲得)等、幅広く経験後、2015年より管理部門に異動。現在は、人事・広報IRを担当しつつ、新しい働き方を実現するための組織づくりを推進。2016年には2カ月間、家族(妻・3人娘)で沖縄に短期移住し、自身もリモートワークを実践。2017年にガイアックスは「新たな社会を構想する人がつながり、ビジョンや活動を共有するシェアオフィス『GRID』」を永田町に設立し、本社を移転。社外に開かれたオフィス環境づくりを進める一方で、「親子連れ出社」など、様々な新しい取り組みも進めている。

イベントの様子(レポート)

働き方と組織の未来―介護問題からダイバーシティを実現する働き方と組織の未来を考える―

多くの人の人生の中で大きなウェイトを占める育児や介護。現状ではそれらと仕事の両立はしばしば困難を伴う。今回の「働き方と組織の未来」ダイアローグセッション特別編は、「介護問題からダイバーシティを実現する働き方と組織の未来を考える」というサブタイトルのもと、実際に介護離職を経験された「個人」側のゲストとして株式会社ガイアックスの高野竜二さん、柔軟な働き方を推進する「企業」側のゲストとして株式会社ガイアックスの木村智浩さんを招き、育児・介護などに左右されない働き方を実現する組織の在り方などについて参加者とともに模索した。

ゲスト①高野竜二さん:介護離職を経験して気付いた新たな働き方

「個人」側のゲストの高野竜二さんは株式会社ガイアックスのデジタルコミュニケーション事業部ICTソリューション事業グループリーダー。エンジニアであり、他のエンジニアの取りまとめといったマネジメントを行っている。

高野さんが介護に関わるようになったのは義理の母親が介護を必要としたことがきっかけだった。当初は奥さんが度々実家の長崎に帰ることでなんとか仕事を続けていたが、病状が悪化すると東京に義理の母親を呼び寄せ、東京での介護をするようになった。しかし介護の負担は大きくなり、それまで以上に仕事に影響が出るようになった。その時の心境を高野さんはこう語る。「自分自身を仕事のお荷物と考えるようになり、他のメンバーが自分の仕事を担った方が良いと思い始めました。フリーランスの経験もあったので退職してこの歳からフリーランスとしてまたやっていくということを考えました。」高野さん自身も「当時は、世の中や企業は在宅勤務などに対して寛容ではないのだろうからまともに働けるわけがないと考えていました」と、働き方について考える余裕がなくなっていたことを明かす。

そして高野さんは退職してから半年後、ガイアックスから人手が足りず困っているという話を聞き、業務委託契約を結び在宅勤務を行うこととなった。この時高野さんは「会社からは決まったアウトプットをしてもらえれば勤務時間等は自身の裁量に任せて良いという条件を提示されて働きやすく、金銭面でも特に困ることがなく助かりました。」とリモートワークを始めることとなった。

反面リモートワークに関して感じた欠点もあるという。「一人で自宅で作業してると夜中に作業時間を多く取ってしまいがちになり、時間管理が難しくなる時もありました。ある時はプログラムのソースコードを3時に提出してクライアントの方から『高野さん、3時まで仕事してるんですか⁉』と心配されることもありました(笑)。その他にもメッセンジャーでやり取りをするので緊急の要件なのかそうでないのかがわかりづらいこともありましたが、その対策としてしつこく文面で具体的に聞くことを意識しました。また、作業自体は一人で行うので孤独になりがちになることもありました。」

その後介護の負担が減り、今年1月からガイアックスに復職し、現在は正社員として勤務している。高野さんは「介護離職を経験した身から、他に介護離職などを検討している人には自分のようなテレワークという働き方もあるということを伝えていきたい。」と、自身が退職した当時の体験も踏まえて参加者、さらには社会に対してメッセージを伝えた。

ゲスト②木村智浩さん:多様な働き方を推進するリモートワーク、その普及

そして「企業」側のゲストは株式会社ガイアックスの管理本部人事労務・広報IRマネージャーの木村智浩さん。ガイアックスは人と人をつなげることをミッションに掲げ、ソーシャルメディア・シェアリングサービス事業などを行っている。

木村さんは「ガイアックスは根本的に一人一人のキャリアプランを重視する会社で、元々個人のキャリアに対する配慮が大きいため、多様な働き方を認めるのもある意味では当然でした」と、ガイアックスが多様な働き方を推進する背景を分析している。

しかし、初めからリモートワークなどの働き方が普及していたわけではなかったと木村さんは語る。「リモートワークは制度上可能でしたがあくまで緊急時の一時的なもので、平常時にリモートワークすると『何もないのに家にいるの?』という感じの雰囲気はありました(笑)。」

そのようなリモートワークが普及するきっかけとなったのが2015年に事業部の最年少部長に2013年新卒入社の菅大輔さんが就任し、リモートワークの推進やクラウドソーシングの活用など、個人の生き方を尊重した働き方の実現を目指したことだ。その結果業績を1年で2倍に、離職率を30%減少させた。「まず部署という小さな単位で始めて成功すると会社全体でも『良いじゃないか』という雰囲気が広がり、そこからリモートワークが普及していきました。それまではリモートワークを提案しても良い反応を得られませんでしたが、実績が実際に出ると変わっていきました」と木村さんは話す。

それではなぜ事業部ではリモートワークに取り組んだのか。その理由は従業員のパフォーマンス向上のためだという。木村さんによると、「実は成功したら幸福になれるというのは間違いで、幸福だと成功するんです。実際に幸福度が高いとパフォーマンスが高いという研究結果も出ています。その話を聞いて事業部部長の彼は多様な働き方を尊重することを目指していったようです。」

それでは、どうしてリモートワークやクラウドソーシングが業績向上につながったのか。その理由は従業員の幸福度・満足度の向上にあるという。「これまでは、メンバーの負担が大きく退職率が上昇し、新メンバーを採用して教育コストが仕事に上積みされ、さらに負担が増加するという負のスパイラルに陥っていました。しかし従業員の満足度が上がると離職率が下がり、職場環境への不満が減ると、その分顧客満足度にフォーカスするようになり、生産性が高まりました。また、先の事業部の部長はクラウドソーシングに10万円という下限を設定し、付加価値の高い仕事を優先して行うように働きかけました」と木村さんは分析する。

そして、リモートワーク実施のポイントを木村さんはこう語る。「リモートワークをする上で重要なのは会社にいなくても迷惑がかからないようにすることです。例えば固定電話は席を外しているときに誰かが取っているかもしれないと考えると気が気でなくなります。だから固定電話をなくしてスマホで着信できるように設定するなどを行います。その他にもFAX等の書類はクラウドに切り替えていくこともポイントでした。また、マネジメント方法についても従来と変わったポイントがあり、一生懸命やっている姿を見て上司が安心するのではなく、アウトプットを重視するように変わりました」と、リモートワーク普及の際のキーとなったことを語った。

高野さんの実体験のお話、木村さんのガイアックスにおける取り組みについてのお話は大変興味深く、そのあとのパネルディスカッションでは「リモートワークを実施する上でのリスクはどう対処するか」「エンジニア以外の職種での働き方改革の今後の展望はどうなるか」などと話題が広がり、大いに盛り上がった。その他にも「メッセージだけでのクライアントとのコミュニケーションで気をつける点はあるか」など、参加者の間では身近な話題にも共感が広がった。

後半ではイベント参加者が4人ほどのグループを組んで、ワールドカフェ形式でのダイアローグを行った。

テーマは「仕事と育児・介護の両立には何がネックになるか?」「個人のライフイベントに対応できる組織とは?」。この2題について、ゲスト2人のお話や個人の実体験を踏まえつつ議論を行った。

議論では、前者については「不確定要素が多く、子供の発熱など、突発的な時間の制約が生まれやすい」「職場など、その場にいないと難しい場合は両立が困難」など、また後者については「一人に過度に負担をかけすぎない」「かつての働き方の価値観を重視した上の世代が力を持っているとライフイベントへの対応は困難。ある程度テレワーク等を強制的に義務付ける枠組みを作るなど、個人個人が実行できる制度を作るなどの対策が考えられる」といった、踏み込んだ議論に発展したグループもあった。

今回、育児・介護の両立についてのイベントではあったが、テレワークについて、導入方法やそれに伴う評価方法の変化など、議論としては個人の自由な働き方を目指すことにつながるような議論が多く交わされた。このような働き方改革への興味がある方にはぜひWork Design Labのイベントに足を運んでいただき、新たな発見をしてもらえれば幸いである。

(Work Design Lab インターンシップスタッフ 田邊慎史)

▼当日のツイッターレポートもあわせて参照下さい。
https://twitter.com/takeshi_kato/status/910458820056408064

イベントの様子(写真)

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