【事例紹介】和歌山県「関係人口創出・拡大に向けたワーケーション受入促進事業」について(令和5年度の活動まとめ)

Wakayama Digital Workation 2023–24

デジタル×地域活性――“学び合い”から始まる関係人口創出モデル


事業の特徴 ― 4つの仕組み

和歌山県は「交流型ワーケーション」を一段進め、関係人口創出・拡大のために「DX 推進」と「産業振興」を同時に狙う“課題解決型”ワーケーションを設計しました。県庁内の「地域振興課」と「デジタル社会推進課」が連携し、DX推進の経験をもつ複業人材を指名型で招致。ワーケーション受入団体(地域事業者)の課題に合わせてマッチングし、伴走チームを組成。Kick-off から Post 伴走まで4層フェーズを設け、短期でも成果と継続性を両立させた点が最大の特徴です。本事業のプレスリリースはこちら

① 部門連携モデル:地域振興課×デジタル社会推進課を合同主管に設定し「ワーケーション×産業振興×DX」を一気通貫で推進。

② DX 複業人材を招致:地域事業者の課題を先読みし、IT/マーケ領域/事業開発経験のある複業人材をピックアップ。地域事業者との相性にも配慮し確定することで短期でも実効性を確保。

③4層フェーズ設計:Kick-off→PreWork→Field→Post の段階設計により、“旅行で終わらせない”課題解決型ワーケーションを実現。

④4名×3チームの伴走体制:ワーケーション受入団体(地域事業者)を複業人材3~4名チームで伴走支援。オンラインでの打合せをワーケーション前後に複数回挟み、関係性を年度を越えて持続。

1. 2泊3日ワーケーションダイジェスト動画(自治体・地域事業者・参加者の声)

ワーケーションのダイジェスト動画(約2分)

2. プロジェクト概要

人口減少とDX人材不足に直面する紀南地域を舞台に、県庁と Work Design Lab が連携し「関係人口創出」「地域課題のデジタル解決」を同時達成する実証事業を推進。KPI と人材要件を明確化し、成果を次年度の実装フェーズへ橋渡しする2段構えで設計しました。

背景:人口流出また産業人材不足と県内 DX 推進の必要性(県内総生産の全国順位は2019年時点で38位と低迷)、ワーケーション先進県のポジション深化
目的:①関係人口を継続的に創出 ②デジタル活用で地域課題を解決する実証モデル構築
KPI:受入3団体/参加者10名以上/2泊3日ツアー/効果分析レポート ほか

 

3. プログラム全体フロー

「短期滞在で成果を出す」ために、現地訪問を真ん中に据えつつ前後をオンラインで挟む4層フェーズで全体を構成。Kick-off で課題共有、PreWork で役割と情報を整理、Field で現地を深掘り、Post で伴走──という設計により、一過性を排し継続的なプロジェクト創出へ接続します。

Kick-off 12/12:受入3社×マーケター25名で課題共有・チーム決定

  • PreWork 12〜1月上旬:各チームがオンライン打合せを複数回実施

  • Field 1/12-14:田辺市・白浜町でヒアリング&フィールドワーク

  • Post 2〜3月:追加打合せ/現地訪問で施策具体化

 

4. 受入団体 × 4名チームの伴走内容

各団体の課題と成長フェーズに合わせ、Work Design Labが3~4名で構成する伴走チームを編成。マーケティング、IT、商品開発、事業開発など多様なスキルを持つ複業人材が、課題整理から施策提案までを短期集中で実行しました。年度終了後も同じチームが関係性を維持し、実装ステージへの移行を行います。

受入団体 チーム編成 初年度支援内容 翌年度の展開
ヒロメラボ 大手ECサイトバイヤー
事業開発担当
アライアンス営業担当 etc
アライアンス・EC導線提案 ヒロメ収穫体験、親子のファミリーワーケーションを試験実施
伊古木レジャーワーフ 大手ホテル経営企画担当
海外事業担当
Saas系プロダクト導入担当
観光動線設計・組織基盤設計 空き家活用×DAO の実証へ向け現地調査継続
富田の水 大手メディア新規事業担当
ITベンチャー創業/経営者
鉄道会社CVC担当 etc
D2C戦略・体験企画 アドベンチャーワールドと共同でペットボトル商品開発

5. 成果ハイライト — 数字でみるアウトカム

事業としてのKPI 達成に加え、参加者エンゲージメントや翌年度の実装案件創出など定量・定性双方で高い成果・兆しが生まれた。また報告会参加者の中から翌年度以降、和歌山のプロジェクトに関わりたいという方(東京在住・和歌山市出身者)からの問い合わせもあった。短期ワーケーションの限界を突破し、継続型プロジェクトへ接続する仕組みの有効性が確認できました。

受入3 団体/参加者11名
Kick-off参加者 25 名
報告会参加 40 名
満足度 4.7/5.0
再訪・複業参画意向 100 %

6. 継続伴走で生まれた“次のアクション”

Field フェーズで終わらず Post 伴走を組み込んだことで、3団体すべてが翌年度に具体的な事業化アクションを開始。ワーケーションは「関係人口の種まき」に留まらず、「新規事業のスプリント」へと発展しつつあります。※下記は2025年5月現在

  1. ヒロメラボ:ヒロメ収穫体験会(2024年3月)ファミリーワーケーションで親子が種付け体験(2024年8月)を企画実施

  2. 伊古木レジャーワーフ:空き家活用×DAO 実証プロジェクトのための現地ツアー実施(2025年5月)

  3. 富田の水:アドベンチャーワールド監修ボトル商品を共同開発(2024年.8月に商品化

7. Work Design Lab の役割

Work Design Lab は「人と課題をつなぐ プラットフォーム」として企画設計からコミュニティ形成、成果可視化までを一気通貫で担当。Kick-off から Post まで伴走し、翌年度の実装フェーズを視野に入れた“継続型ワーケーション”のプロトタイプを構築しました。

  1. プロジェクト設計・KPI策定

  2. 複業人材マッチング・チームビルド

  3. Kick-off → Field → Post 全工程ファシリテーション

  4. 成果可視化(報告書・動画・WEBコンテンツ)

8. まとめ

「ワーケーション=観光施策」と捉えると投資対効果が限定的になります。本事例は部門横断・フェーズ分割・指名型人材招致の3点を押さえることで、「関係人口創出」と「地域産業のDX」という2つの経済価値を同時に引き出しました。

  • 部門横断で“ワーケーション×産業振興”を設計

  • 課題整理フェーズと実装フェーズを分けて投資効率を最大化

  • スキル保有者を指名型で招致し、短期でも成果を出す