【事例紹介】東広島市「地域共創型課題解決事業(通称:TORQUE [トルク] 事業)」について(令和4~6年度の活動まとめ)

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【事例紹介】東広島市「地域共創型課題解決事業(通称:TORQUE [トルク] 事業)」について(令和4~6年度の活動まとめ)

東広島市「地域共創型課題解決事業(通称:TORQUE [トルク] 事業)」について(令和4~6年度の活動まとめ)

地域に点在する挑戦者が「回転力 = TORQUE(トルク)」となり、未来へ駆動するまち「東広島市」。令和4~6年度に東広島市とWork Design Labが連携して実施した「TORQUE(トルク)事業」の3年間の活動を以下にご紹介します。本事業では行政・企業・住民・外部人材(関係人口)が手を取り合い、共創型で地域課題解決を目指すことを目的に実施されました。

もくじ

    1. TORQUE(トルク)事業とは?

    TORQUE(トルク)事業の紹介動画(約2分)

     

    TORQUE(トルク)事業は、東広島市が掲げる将来都市像「未来に挑戦する自然豊かな国際学術研究都市~住みたい、働きたい、学びたいまち、東広島~(※第五次東広島市総合計画より)」の現実を加速するための共創型課題解決プログラムです。市は「目指すまちの姿(※1)」として5つの方向性を基盤に、解決すべき課題とアイデアを公募。アイデアを深堀、実行するにあたり必要な外部人材チーム(3~8名程度)と地域プレイヤーをマッチングし、点在する力を回転力=トルクへ変換して大きなうねりを生み出すことを目的に、令和3年度より本事業を実施しています。(Work Design Labは令和4~6年度まで受託事業者として本事業を推進。東広島市は総務部 DX推進監が所管しています。)

    <※1:目指すまちの姿・5つの方向性>
    1.地域イノベーションの積極的な展開
    2.希望ある未来へ挑戦する新たなプロジェクトの展開
    3.次の時代を見据えた地域共生社会の実現
    4.豊かな自然環境の保全と活用
    5.国際色豊かなまちの形成

     

    2. 課題背景

    東広島市は令和6年4月に市制施行50周年を迎え、すべての人がWell-being(幸福感)を感じられる「やさしい未来都市 東広島」というキャッチフレーズを掲げています。学術研究都市として成長する一方、多様な地域課題も存在しています。豊かな自然や高度な知の集積はありますが、課題と人材つなぐハブが不足していました。TORQUE は“課題と人材を掛け合わせる場・ハブ”を設置することで、行政単独では解決が難しいテーマに挑戦し、地域の潜在力を引き出す役割を担っています。

     

    3. How it Works(選考〜伴走フロー)

    ①公募・相談会 → ②書類審査 → ③現地ヒアリングで課題を高解像化 → ④採択後、Work Design Lab が外部人材をマッチングし伴走支援 → ⑤4か月〜1年の実証を経て成果発表。毎年度ほぼ同じフローを採用し、主な審査観点は「社会的インパクト・アイデアの実効性・課題に対するオーナーシップ」。短期で仮説検証し、来年度以降の継続判断を行います。

     

    4. 3Years at a Glance(実績サマリー)

    令和3〜6年度で採択テーマは計13件(令和4~6年度は計11件)。「まちづくり組織」「地域分散型ホテル」「地域の人事部」「高校生の探求学習」「テレワーク人材活用」「空き家活用」「スケボー×教育」「若者の地域との関わり」「まちの保健部」など多領域に広がり、ソーシャルインパクト創出に向けたプロジェクトが同時多発的に興ることで、挑戦者フレンドリーな文化醸成が促進されています。各テーマは実証フェーズで成果指標と次年度計画を公開し、横展開可能な知見を蓄積しています。

    ▼採択テーマ一覧

    令和4年度令和5年度令和6年度

    ▼採択された地域事業者と伴走チームの声(プロジェクト紹介動画 約2分)

    ※伴走チームはWork Design Labメンバー3~8名で構成。

    【テーマ:まちづくり組織の設立】株式会社新川

    【テーマ:テレワーク人材活用】株式会社ixis

    【テーマ:地域分散型ホテル】合同会社CONTACT

    【テーマ:空き家活用】株式会社GLOCAL

    【テーマ:若者の地域との関わり】合同会社アルステクト

    【テーマ:スケボー×教育】Brooklyn Project

    【テーマ:まちの保健部】リハビリの家庭教師らいと・うぇい

     

    5. Impact Stories(代表事例)

    ・合同会社CONTACT
    令和5年3月に合同会社CONTACT、広島県立賀茂北高校、一般社団法人Work Design Labの3者で「地域への愛着醸成と地域活性化(探求学習支援)」をテーマに連携協定を締結。地域の事業者や小中高校生と一緒に創るセントルマルシェでの商品開発及び販売を実施、また豊栄エリアの空き家をリノベーションした交流拠点・珈琲ショップもオープンさせている。※地域分散型ホテルプロジェクトの紹介動画(約2分)でもセントルマルシェの様子、及び賀茂北高校校長のコメントが紹介されています。

    ・株式会社新川
    まちづくり法人「合同会社トモシビファーム」が誕生し、地域プレイヤーが連鎖的に参画。移住支援や起業開業支援、交流会などのイベントを開催し、交流人口を増やすことで魅力的なまちづくりを開始している。また安芸津のひとと暮らしを紹介するまちづくりポータルサイト「あきつとあしたに」をオープンし、サイト経由での移住者もうまれてる。

    ・株式会社ixis
    経済産業省事業(「令和6年度地域戦略人材確保等実証事業」)の「地域の人事部」に採択。地域企業の課題解決・魅力向上を目的として、東広島市に特化した人事ネットワーク「東広島の人事部」を発足させました。採用に課題を抱える中小企業に対してノウハウを展開。令和6年度の経済産業省の事例集(「地域の人事部」の推進に向けたヒント集)にもixisの取り組みが掲載されました。

    小さな実証が次々と波及し、地域内外の挑戦者をつなぐ好循環を生み出しています。

     

    6. Success Drivers(成功要因)

    ①課題の解像度—多視点で課題を掘り下げ本質を共有。②チームづくり—地域“X人材”と外部プロが核となる小規模チームを構成。③密度あるコミュニティ—一定の密度で挑戦者を接続し、新結合を促進。この3点が組み合わさり、実証から事業化へ加速するエンジンが形成されました。

    令和6年度の最終報告会でこれまでの事業の考察を説明するDX推進監の中井哲也氏

     

    7. Voices(関係者コメント)

    「行政だけでは生めない価値がここで生まれた」—髙垣ひろのり 市長
    「課題を高解像化すれば解決の糸口は必ず見える」—中井哲也 DX推進監
    「外部の複業人材チームとの共創で事業スピードが3倍に」—採択事業者の声
    挑戦者・行政・外部人材が同じ熱量で語る言葉が、次の挑戦を呼び込みます。

    令和6年度の最終報告会で総括コメントをする高垣ひろのり市長

     

    8. Contact

    本事業に関するお問い合わせはコンタクトフォームからどうぞ。

    【事例紹介】和歌山県「関係人口創出・拡大に向けたワーケーション受入促進事業」について(令和5年度の活動まとめ)

    令和5年度に、和歌山県と一般社団法人Work Design Labが連携して「地域の課題解決(DX推進)」をテーマにした「関係人口創出・拡大に向けたワーケーション受入促進事業」を実施しました。

    もくじ

      1. 2泊3日ワーケーションダイジェスト動画(自治体・地域事業者・参加者の声)

      ワーケーションのダイジェスト動画(約5分)

       

      2. 事業概要

      人口減少と産業人材不足に直面する紀南エリアをフィールドに「地域の課題解決(DX推進)」と「関係人口創出・拡大」を同時に達成することを目的にしたワーケーションの実証事業を実施。ワーケーションで生まれた成果を、次年度以降の社会実装につなげるモデルの確立を目指しました。
      【事業内容】:ワーケーション受入3団体/参加者10名以上/2泊3日ワーケーションツアー実施/効果分析レポート ほか

      事業の特徴 ― 4つの仕組み

      ワーケーションの設計にあたっては和歌山県庁の「地域振興課」と「デジタル社会推進課」が連携し、DX推進の経験をもつ参加者を指名型で招致。ワーケーション受入団体(地域事業者)の課題に合わせて参加者をマッチングし、伴走チームを組成。短期間で成果と継続的な関係性構築を両立させた点が最大の特徴です。本事業のプレスリリースはこちら

      ① 部門連携モデル:地域振興課×デジタル社会推進課を合同主管に設定し「ワーケーション×産業振興×DX」を一気通貫で推進。

      ② DX複業人材を招致:地域事業者の課題を先読みし、IT/マーケ領域/事業開発経験のある参加者(=複業人材)をピックアップ。地域事業者との相性にも配慮し伴走チームを組成することで、短期でも実効性を確保。

      ③フェーズ設計:キックオフ(Kick-off)→事前準備(PreWork)→2泊3日ワーケーション(Field)→ポスト伴走(Post) の4つの段階設計により“旅行で終わらせない”課題解決型ワーケーションを実現。

      ④チーム伴走体制:ワーケーション受入団体(地域事業者)に対して、参加者(=複業人材)3~4名チームで伴走支援を実施。オンラインでの打合せをワーケーション前後に複数回挟むことで、継続的な関係性を構築。また参加者同士でチーム内での学びあえる設計をすることで参加者の満足度も高まった。

       

      3. プログラム全体フロー

      「短期滞在で成果を出す」ために、2泊3日でのワーケーションによる現地訪問を中心に据えつつ、前後をオンラインで挟む4層フェーズで全体を構成。「キックオフ(Kick-off)」で課題共有、「事前準備(PreWork)」で役割と情報を整理、「ワーケーション(Field)」で現地を深掘り、「ポスト伴走(Post)」でフォローアップ──という設計により、継続的なプロジェクト創出へ接続します。

      • ①キックオフ(Kick-off) 12月(12/12):受入団体3社 × 参加者候補25名で課題共有・チーム決定

      • ②事前準備(PreWork) 12〜1月上旬:各チームがオンライン打合せを複数回実施
      • ③ワーケーション(Field) 1月(1/12-14):田辺市・白浜町で2泊3日のワーケーション実施

      • ④ポスト伴走(Post) 2〜3月:追加打合せ/現地訪問で施策具体化

       

      12/12開催 キックオフイベント

       

      4. 受入団体と支援チームの伴走内容

      受入団体の課題と成長フェーズに合わせ、参加者(=複業人材)が3~4名で構成する支援チームを編成。IT、マーケティング、事業開発、商品開発など多様なスキルを持つ複業人材が、課題整理から施策提案までを短期集中で実行しました。年度終了後も同じチームが関係性を維持し、実装ステージへの移行を行います。

      受入団体 チーム編成 初年度支援内容 翌年度の展開
      ヒロメラボ 大手ECサイトバイヤー/
      事業開発担当/
      アライアンス営業担当 etc
      アライアンス・EC導線提案 ヒロメ収穫体験、親子のファミリーワーケーションを試験実施
      伊古木レジャーワーフ 大手ホテル経営企画担当/
      海外事業担当/
      Saas系プロダクト導入担当
      観光動線設計・組織基盤設計 空き家活用×DAO の実証へ向け現地調査継続
      富田の水 大手メディア新規事業担当/
      ITベンチャー創業経営者/
      鉄道会社CVC担当 etc
      D2C戦略・体験企画 アドベンチャーワールドと共同でペットボトル商品開発

       

      5. 成果ハイライト — 数字でみるアウトカム

      事業としてのKPI 達成に加え、参加者エンゲージメントや翌年度の実装案件創出など定量・定性双方で高い成果・兆しが生まれた。また報告会参加者の中から翌年度以降、和歌山県での活動に関わりたいという声も多くもらった。短期ワーケーションの限界を突破し、継続型プロジェクトへ接続する仕組みの有効性が確認できました。

      ・受入3 団体/参加者11名
      ・キックオフイベント参加者 25 名/報告会参加者 40 名
      ・受入団体・参加者のワーケーション満足度 4.7/5.0
      ・参加者の和歌山への再訪・複業参画意向 100 %

       

      6. 継続伴走で生まれた“次のアクション”

      「ワーケーション(Field)」フェーズで終わらず 「ポスト伴走(Post)」を組み込んだことで、3団体すべてが翌年度、事業化に向けたアクションを開始。ワーケーションは、関係人口の種まきに留まらず、新規事業開発を含む産業振興へと発展しつつあります。※下記は2025年5月現在

      1. ヒロメラボ:ヒロメ収穫体験会(2024年3月)ファミリーワーケーションで親子が種付け体験(2024年8月)を企画実施

      2. 伊古木レジャーワーフ:空き家活用×DAO 実証プロジェクトのための現地ツアー実施(2025年5月)

      3. 富田の水:アドベンチャーワールド監修ボトル商品を共同開発(2024年8月)

      プレスリリース:アドベンチャーワールドと白浜町の「サスティナブルSmile連携協定」に基づく防災活動の一環として紀州熊野の名水「富田の水」を防災備蓄用のペットボトルとして商品化

       

       

      7. まとめ

      「ワーケーション=観光施策」と捉えると投資対効果が限定的になります。本事例は、部門横断・フェーズ分割・指名型での人材招致の3点を押さえることで、「関係人口創出・拡大」と「地域課題解決(DX推進)」という2つの経済価値を同時に引き出しました。

      • 部門横断で“ワーケーション×産業振興”を設計

      • 課題整理フェーズと実装フェーズを分けて投資効率を最大化

      • スキル保有者を指名型で招致し、短期でも成果を出す

       

      8. Contact

      本事業に関するお問い合わせはコンタクトフォームからどうぞ。